理事役員

理事長 白井 祐哉

地方で生きる

 

「あのまま東京にいたらどうなっていたかな」

 

テレビやインターネットで東京のニュースを目にしたとき,東京にいる友人知人と久しぶりに連絡をとることがあったとき,ふと考えることがある。

 

「日本の中心に行きたい!」と,大学進学を機に上京して以来,約10年間を東京で過ごした。東京にはたくさんのものがあった。たくさんの人がおり,たくさんの経験ができ,とても刺激的で楽しいまちであった。しかし今,私はこうして呉に住んでいる。そして充実した毎日を過ごすことができている。

もちろん,忙しくて目が回ることもあるし,将来への不安がないわけではない。ただ,憧れだった東京を離れ,故郷の呉に帰ってきて以来,この決断を後悔したことは一度もない。

 

内閣に設置されている「まち・ひと・しごと創生本部」の調査によると,東京から移住する予定又は移住を検討したいと思っている人はおよそ4割にものぼるらしい。翻って,現在の呉市。人口減少と少子高齢化という継続的な問題を抱えており,転出入についてもここ数年の増減比は常にマイナスとなっている。

しかし,時代背景としては,今は大都市から地方に人を呼ぶチャンスであるといえる。ICTを活用したテレワークが推進され,人が,企業の本社がある大都市にいなくても働ける時代になってきている。業種として取り組みやすいIT分野においては,地方へのサテライトオフィスの設置やエンジニアのUIターンの実例が多く見受けられる。地方自治体も移住を促進する取り組みを積極的に行っており,呉市においては,定住サポートセンターを設置し,移住者向けセミナーや移住希望者住宅取得支援事業など様々な取組みをおこなっている。

さらに,価値観という視点からも,「多様性」がキーワードとなっており,「自分らしく生きる」ことが認められる社会になってきている。いい学校を出て,大企業に就職し,結婚し,家を買い,子供を二人育て,定年まで働いて,のんびりと余生を過ごす。このような画一的な理想を皆が追い求める時代ではなくなっている。日本経済の中心である東京で働くのではなく,「地方で自分らしく生きる」ことを選択することも珍しくない。誰に遠慮することもなく,それぞれの人生を生きていける世になっている。

このように今,時代は「地方移住」を後押ししているのである。この時流に乗り,呉に住もうという若年層を増やすための取り組みを行い,呉を若年層の活気にあふれるまちにしていく。

 

 

呉で生きることの魅力を伝える

 

呉市内の高校生に向けた進路調査によると,進学希望者の6割が市内を含めた県内,就職希望者は5割が市内,4割が県内と,地元志向が高まっているといわれている。しかし,多くを占める進学希望者のうち市内を希望する学生はおよそ5パーセントしかおらず,県内を希望する人も,就職先や進学先,本人の志向によっては,市外に出るという選択をするだろう。そこで,まずはこの市内にいる少年少女にアプローチする。

今,小中高校生に対するキャリア教育が積極的に行われており,企業経営者や士業関係者が高校に招かれて講師を務めることも多く,キャリア・スタート・ウィークのような職業体験の機会も定着しつつある。これに加えて,キャリアだけでない「生き方」教育を提供したい。生活の拠点とするという視点において,呉のまちは,都市機能と豊かな自然を併せ持つという魅力を備えている。より多くの人が,それぞれの価値観で,自分らしく生きることができるまちなのである。少年少女により近い年代の大人である我々が,魅力的な呉でのリアルな生活を伝え,その価値を感じてもらうことで,将来の選択をする際に「呉で自分らしく生きたい」と思ってもらう。そして長く残るような経験をさせることができれば,一度呉から出てしまった人たちについても,それぞれの人生の選択をする際に,呉で生きることを選択してくれるであろう。

 

 

地域で育てる

 

移住しようとする人の中で「住民に受け入れてもらえるか,地域になじめるか不安」という意見は多い。そして特に若年層の移住においては,子育てが重要なポイントとなる。そこで,子供と地域を,子育て家族と地域をつなげることに取り組んでいきたい。

常日頃から挨拶が交わされ,地域行事は大勢の参加者でにぎわい,困った時はお互いさまと近所でサポートし合えるコミュニティ。そこでは,自然と地域で子供を育てるということが行われるだろう。コミュニティの基盤は,やはりその地域の中で交わされるコミュニケーションにより作られるものである。そのため,まずは「子供を介した地域内コミュニケーションが活発になるような活動」を行い,地域で子育てをする基盤を作る。

先述のとおり,都市機能と豊かな自然を併せ持つ呉のまちは,子育てをするのにも良い環境である。さらに,行政は少子化対策として早くから子育て支援に取り組んでおり,様々な事業を行っている。そこに「地域で育てる」という意識を呉市民がもつことで,より呉で子育てをしたいと思う子育て世代を増やす。そしてその活動をとおして,活動に参加した方や,その地域で育てられた子供が,「将来,子育てするなら地元でやりたい」という思いをもつ,好循環を生みだしていきたい。

 

 

広報活動の重要性

 

このように,まちの魅力を向上し,「いい」まちになったとしても,その魅力に気付いてもらわなければ「選ばれる」ことはできない。そこで,従来のホームページやチラシ,マスメディアの活用に加え,ターゲットを絞った広報にも挑戦したい。

地方で生活したいと考える人が何で情報を得ているのか。「この事業を,この呉というまちの魅力を」見て欲しい人に届けるための媒体・機会を選定し,その内容を精査し,効果的な広報を行っていく。

 

 

相手を知り,自分を知ってもらう

 

そして,当然この会員減少について手をこまねいているわけにはいかない。会員の減少は我々の活動規模の縮小に直結する。そして,このまちに若年層を呼び込もうとするのであれば,このまちの若年層がまちのために積極的に活動していなければならない。しかし私自身,呉に帰ってこなければ,そしてこの青年会議所に入らなければ,自分がまちの大切な構成員のひとりであること,まちづくりは他の誰でもないそのまちに住む自分自身がやらなければならないこと,そしてそのやりがいや苦労に気づいていなかったと思う。同世代のまだ見ぬ仲間は,このまちに対してどのような想いを持っているのか。まずは相手を知り,我々を知ってもらう機会を設けたい。そして我々の想いに共感してくれる仲間を増やしていきたい。

 

 

互いを知り,一丸となる

 

このようなチャレンジをしていくのが我々呉青年会議所である。しかし,人口減少の世の中,ご多分に漏れず当団体の会員も一時期より減少し,会員の構成についても多様化してきた。

人数が減少しており,様々な立場の会員がいる中,今まで以上のパフォーマンスを発揮するためには,よりひとりひとりが主体的に,効率的に動き,一丸となって取り組む必要がある。会員の平均在籍年数も下がっているが,呉青年会議所を形づくっているのは今ここにいる会員である。そのため,積極的な会員交流を行い,お互いを理解し,会員全員で組織の基盤づくりを行っていく。そして活発なコミュニケーションにより作られた土台で,一丸になって事業に臨み,呉のまちに貢献する団体となる。

 

 

広島ブロック大会という機会

 

また,2020年度は呉青年会議所が日本青年会議所中国地区広島ブロック協議会のブロック大会を主管する。広島の未来を考え発信するこのブロック大会は,主管とはいえ我々青年会議所だけで行えるものではなく,市民・県民の方々にも多大な協力をいただかなければならない。そして50回という記念すべき大会をこの呉の地で,そして我々が行うという意義を考えなければならない。今後10年の広島ブロック大会の指針となるような大会にし,それを各所から訪れる多くの青年会議所の仲間に伝え,我々の活動の意義を市民・県民の方に感じてもらえる機会とする。そして同時に,一昨年豪雨災害にあったこの呉は,今,復興に向け力強く歩んでいるのだということを発信する大会としたい。

呉青年会議所が一丸となって取り組まなければならない事業である。ここでこの大会を成功させることができれば,それは会員にとって大いなる自信となり,組織としても得難い経験となる。その自信と経験を力に変え,我々はより一層呉のまちに貢献する団体となっていく。

 

 

 

8年前,私はこの呉のまちに帰ってきた。

そのとき,呉のまちに活気がないと感じた。10年間離れたこのまちは,私の記憶とは違うまちとなっていた。

 

しかし,私はこの呉青年会議所で,呉市の課題に立ち向かい,明るい豊かな社会の実現を目指して尽力する多くの仲間と出会い,共に活動してきた。そして我々の他にも,呉のまちのことを考え,活動する多くの同世代の方々にもお会いした。呉には明るい豊かな将来への活力は確かに残っている。

 

今年度,我々はこの活力を高めるための取り組みを行う。若年層の増加は,将来の若年層の増加に大きく寄与する。つまり,この取り組みで得た活力は,次代の活力を生みだす源泉なのである。かつてそうであったように,呉のまちが再び,活力が継続されるまちへとなる第一歩を創り出したい。

 

まちの将来をつくるのは我々の世代である。そのことを今一度自覚し,青年としての英知と勇気と情熱を持って,明るい豊かな呉の将来のために活動していく。