理事役員

理事長 神田 真生

~はじめに~

 『虎穴に入らずんば虎子を得ず』ということわざがあります。虎の巣穴に入らなければ虎の子は得られないことから転じて、危険を冒さなければ成功することはないという意味で使われている、私の好きな言葉です。
青年会議所活動において、虎の巣穴に入ることはありませんが、挑戦しなければ成功はない、成果を得ることができないといった点では同じです。
人の考え方、価値観は時代によって変化します。以前は常識であった慣習も、現在では非常識に変化することがあります。若者のリーダーたる青年会議所会員は、その時代に即した価値観に誰よりも敏感であるべきです。そのため、変化を恐れてはいけません。
しかし、何でも新しいことをすれば良いわけではありません。先例に対して、常に価値や意義を見出せるか判断しながら、いま最適なものを選択していくべきです。
先人が築いたまちを、若者が引継ぎ、時代に合ったものへと変化させながら、後へと残し、また次世代へと引継いでいく。これからも、そうあるべきだと考えます。なぜなら、まちを盛り上げる原動力は、若者だからです。
より良い変化をもたらすためには、新しいことにも挑戦し、成功を収めるための準備を万全に整えた上で、使えるものは惜しみなく使い、できることは何でもやってみる。我々はそのように行動してゆくべきです。

~呉市への愛着~

呉市において、もう何年も前から課題とされていることの1つが、人口減で、生産年齢人口の減少が深刻化しています。自然減や転入・転出者のバランスなど様々な理由がありますが、年間約1,000人、とりわけ若年層の減少が続いています。
呉市内の若者(高校3年生)を対象に行ったアンケートによると、卒業後、就職を希望する人の半数以上が、呉市内を希望しています。しかし、呉市外に進学した場合、その後、呉に戻るという意思を示す人が少ない、という結果が出ています。
それはなぜか、例えば、「就職したい業種がない」「自立したい」といった理由があります。
では、どのような業種を希望するかという結果を見ると、「医療・福祉」「教育・学習支援」「公務員」が上位を占めています。これらの業種は、もちろん呉市にも存在しているものばかりです。また、自立したいと考えるなら、呉市でも十分に、自立することは可能です。
つまり、物理的に呉に戻って来られないのではなく、精神的に戻って来たいと思わないから、呉市外で就職する人が多いのだと考えられます。その他に「都会で暮らしてみたい」「住んでみたい地域がある」という理由が挙げられていることからも、それが窺えます。
それならば、呉市の若者、子どもたちに幼い頃から、呉市に対しての愛着の心を持ってもらい、育てる必要があります。愛着の心を育てることで、たとえ進学で呉市外へ出たとしても、いずれ戻って来たいという心が芽生えます。さらには、愛着の心があることで、呉市での就職、結婚、その後の教育を含めた子育て、定住へとつながります。
そのような好循環が定着すれば、人口、生産年齢人口の減少を抑えていくことができ、呉市は将来にわたり若者があふれるまちになります。若者があふれるまちは、活力あるまちです。我々は活力あるまちを創造していきます。
これまでも、呉青年会議所ではこのような課題に向き合い、5年後、10年後さらにはその先の未来のために、様々な種を蒔いてきました。しかし、これはすぐに結果がわかるものではありません。だからこそ、これまでとは違った角度からも、種を蒔いてゆきたいと考えています。

~脅威への備え~

何事も準備が必要だと頭では理解していても、自分の身に起こったことでなければ考えづらい、準備しづらいのが実状です。近年、日本全国において様々な災害が、毎年起こり、大きな被害をもたらしています。呉市においても2018年に豪雨災害に遭ったことは記憶に新しく、また、昨年は新型コロナウイルスにより、人々の生活は大きな変化を求められ、呉青年会議所においても活動に大きな制限を強いられました。災害やウイルスによる被害は決して対岸の火事ではなく、いつどこで誰が被災するか分かりません。
2011年、東日本大震災の影響による津波によって多くの命が失われました。そのような状況の中で、岩手県釜石市内の小中学生の生存率は99.8%でした。この事実は『釜石の奇跡』と呼ばれ、大きな反響を呼びました。しかし、これは決して奇跡ではなく、日頃から積み重ねられてきた防災教育が実を結びました。釜石市は過去にも津波に襲われているという背景もあり、地震と津波に対する防災訓練は、より現実味を帯びたものでした。普段から備えていたため、いざ震災が起こった際に、中学生達が中心となって避難を呼びかけ、逃げ遅れたお年寄りや幼い子ども達の手を引いて避難し、結果として多くの命が助かりました。
このように非常事態に対して、日頃から備えることはとても大切です。
現在、SNSなどのツールが発展し、誰もが様々な情報を受信でき、発信することもできます。そして、その中には根拠のない情報や誤った噂話も存在します。だからこそ、呉市民一人一人が、様々なツールから得た情報を的確に見極め、脅威に備える必要があります。その中でも、行動力があり発信力もある、若者の力というのは非常に重要です。若者に他人事ではなく、自分事として考え行動する心を芽生えさせることが、呉市における今後の防災への備えとなります。
そういった心が芽生えれば、非常時のみに限らず、どのようなことに対しても、自分事として考え行動する人が増えます。
そうすると、『釜石の奇跡』が奇跡ではなく、積み重ねられてきた教育の賜物であったように、呉市にとっても、必然となります。

~会員拡大~

青年会議所活動において、仲間が多ければ多いほど、団体としてのマンパワーが確実に増加します。青年会議所に入会することで、新たな出会いも増え、会員それぞれが豊かな人脈、つながりを持つこともできます。
そのような中で近年、呉青年会議所では、女性会員が減少の一途をたどっています。男女による優劣はありませんが、視点の違いはあると感じています。現在の呉青年会議所は男性会員の割合が高いので、そこに女性会員が加わることにより、これまでと違う角度の視点から、物事を見ることが可能となります。そのためには、女性に対しても、もちろんのこと、誰もが活動しやすい環境にする必要があります。
その中で、1人でも多くの新たな仲間と出会い、共に活動できるよう、会員拡大をしてゆきます。

~わかりやすく伝える~

呉青年会議所の理念は、明るい豊かな社会の実現です。この理念を呉のまちへ広く伝え、呉市民の皆様に、我々の活動に興味を持って参加していただくには、呉市民の皆様とのつながりを構築し、維持することが必要であり、呉青年会議所の存在を、多くの人に知っていただくことが重要です。それを可能にするには、情報伝達の精度を上げていくべきです。
情報というものは人に知っていただけなければ、目にしていただけなければ全く意味がありません。わかりやすく正確に、心に残るものを、どのような方法を使えば目にしてもらえるか、仕組み、仕掛けを考え、既存の媒体も含めて、新たな方法にも挑戦する必要があります。
さらには、呉市外のより多くの人たちに呉市のこと、呉青年会議所のことを知ってもらうためには、それだけではなく、わかりやすく目立つもの、今この瞬間に本当に必要なもの、記憶に残るものなどが必要です。現在使用しているホームページなどの媒体を含め、情報提供の場を広げてゆきます。

~新たな形も考える~

新型コロナウイルスの感染拡大に関して、2020年4月7日、7都府県において日本で初めて緊事態宣言が発令され、その後4月16日には全国に広がり、我がまち呉も経済活動の規模縮小など、多大なる影響がありました。
呉青年会議所としても予定されていた事業の中止や延期など、活動の自粛を余儀なくされました。
70年近くある、呉青年会議所の長い活動の歴史の中で、育まれ受け継がれてきた、変えたくはない、素晴らしいものがあります。伝統や、礼儀を重んじるといった、目に見えないものがそうだと考えます。また、本来であれば、いつであっても会って話をすることが、親交を深める、物事を伝える上で最も効果的であります。これまで、会って、集まって活動することが当然でしたし、これからもそうあるべきだと考えます。しかし今後、新型コロナウイルスに限らず、豪雨などの自然災害によって、そのように活動することが難しい局面が増えることが予想されます。
そのような事態に陥った時に、慌てることがないよう、集まらなくても、同等か、それ以上の効果を得られる活動方法を準備しておく必要があります。例えば、昨年も利用したオンライン会議の活用などです。
そのように、新たな形も考え、会員やその家族を不安にさせない運営をしてゆきます。

~結びに~

2011年、私は呉青年会議所に入会させていただきました。入会当時は呉のまちのため、呉の人々のためといった考えも、自分のために何かやろうといったことも考えていませんでした。青年会議所本来の目的や活動ではなく、ただ単に野球をする、という1つのきっかけが私を呉青年会議所に留まらせ、途中で投げ出すことなく、本来の目的や活動に関わる内に、だんだんこの団体に魅せられていき、様々な役職を経験させてもらいました。どこにどんなきっかけが転がっているかわからない、人間はいつどこでスイッチが入るかもわかりません。
呉青年会議所は様々な業種の様々な人たちが集まる団体です。しかも個性の強い者たちの集まりで、どうすればより良いまちになっていくか、何を変えれば、また何を残せばより良くなっていくかなど、呉のまちに対する想いを会員は持っていると思います。そんな中でも、まちづくりに対して会員同士の意見の相違や、考え方の違いも当然あります。また、そんな会員の約4割が入会3年以内、全体の7割以上が入会5年以内の、柔軟な新しい発想をもった若い会員です。長い間活動していると、自分が若い頃にやってきたことが当たり前、常識だと考えてしまいがちです。しかしそれに囚われてしまっては新しいことに挑戦しにくくなります。自分とは異なった感覚、発想に良くも悪くも驚かされることがありますが、そんな会員の個性を大切にして、新しいことに挑戦する心も持ちながら、時に厳しくほとんど優しく、明るい豊かなまち、呉のために突き進んでいく所存です。

※参考
・呉市民意識調査結果報告書(令和元年)
・若者(高校生)の定住志向に関するアンケート調査(令和2年3月)

 

第69代理事長 神田 真生